厳しい現実・・・。

カルテ
04 /04 2009
前回の「王蟲ネタ」は楽しかったですが、
はじめに言っておきますが、今日のネタは楽しくありません。
楽しさは毎日は続きません。それもまた人生。
ではいってみましょう!

高齢化は、長寿という意味では歓迎すべきことなのですが、
人間と同じように長生きするとそれだけ、
「ガン」の発生率が高くなります。

当院はさまざまな動物を診て、さまざまなガン症例が来院しますが、
今回は、その中でも、「極悪系ガン」に入る「扁平上皮ガン」のご紹介です。

扁平上皮ガンは、あらゆる動物のあらゆる部位に発生報告がありますが、
私の診療している動物では、プレーリードッグ(ジリス系)の
口腔内に多く発生が認められます。

初期の症状としては、
・口から少し出血する。
・何となくものを食べづらそうにする。
などといった「大したことのない」症状で来られます。

そういった子の口腔内を検査すると、歯ぐきや舌に、
赤いポチっとしたオデキが出来ています。
これが扁平上皮ガンの赤ちゃんなのです。

はじめはとても小さいので、飼い主さんもそれほど重要視しませんし、
プレちゃんは、たいてい大暴れするので、
無麻酔での検査も積極的には出来ません。

が・・・・、放っておくとアレヨアレヨという間に、
雨後のタケノコのごとく成長し、
顎骨を蝕み、巨大化します。
これが、このガンの怖いところです。

治療は、外科的切除をはじめ、抗がん剤、放射線療法、レーザー治療など
さまざまな試みがされていますが、特効的な決定打は確立されていません。
premass.jpg
口をあけたところです。舌の下脇に大きな扁平上皮ガンがあります。
こうなると、物を飲み込むこともままならなくなります。

これを外科的に切除するとなると、多量の出血は避けれらません。
術中の出血は、気道を塞ぐ可能性も高く、非常に慎重に行われます。
私の場合、気力と集中力を高め、「えいやっ」と。。。

premass2.jpg
なんとか、形にはなりました・・・・(汗)。

が、実はこれで全然、「完治」にはならないのです。
一見、「よさそう」ですが、微量に残っているガン細胞が再度成長し、
また、巨大な塊を作ります。
結果、「振り出しに戻る」ことがほとんどです。

なんとも受け入れがたいこの現実。
私にとっても、非常に辛い現実です。
医学の進歩を望まずにはいられません。

コメント

非公開コメント

飼い主として…

先生こんにちは。
動物にも「極悪系ガン」は存在するのですね。
数年前、知り合いがステルス系の癌を患い、あっという間に…。そして、今はこれまた知人が2名、乳ガンを患っており…。私は医者ではないので、治療することができません。困った時の神頼みではないですが、岐阜県に癌封じのお寺があると聞いて、せめてそこにお願いしに行こうと思っています。
なんか、暗い内容になってしまいました。すいません。
動物は口がきけない分だけ、飼い主がその分、ちゃんと日頃からよく見てあげなきゃいけないなと改めて思いました。つい、院長先生に診てもらえれば、なんとかなる!と勝手に先生をスーパーマンのように考えていましたが、私がこの子の些細な変化に気付いてあげることが大事ですよね。あっ!でも、先生がいらっしゃるので、絶対的な安心感はあります。だから…先生はやっぱりスーパーマンです!!

とは結局よくわからないのですが、治る癌もでてくれば、あまりに進行の早い癌(人間の話ではありますが)、癌も進化しているかのように思えていました。
食生活の大きな変化やストレスフルな社会生活が要因な気がしていましたが、それでも長寿は癌の可能性を高めているのですね!?
ペットには長生きして欲しいですが、ペットが苦しむ姿を見るのも大変かと思います。飼い主さま頑張って下さいね。
スーパーマンさんもいますから(笑)

p.s.子供のころうさぎを飼っていました。今のような珍種のうさぎさんではないですが、13年くらい生きたでしょうか。
その頃にしては珍しかったようで動物病院では驚かれましたが、白内障(恐らく見えていなかったかと思います)等々いろんな故障をかかえ、最後は自分でケージに体当たりして死んでしまいました。最後は辛かったんだろうなと。

Takayo様

コメントありがとうございます。
癌は、動物であれ、人間であれ、醜いものです。
それは、自分が癌にならなくてもそう言えます。
ひとたび自分のペットや関係者が癌になってしまうと、
感染したようにずしーん重い気持ちになります。
私とて動物の癌との戦いはいつも勝つわけでもなく、
負け戦をやることもあります。
いつも自分の無力さを実感します。
でも、向かう気持ちだけはいつも負けないようにしたいものです!

RH様

コメントありがとうございます。
細胞には寿命があるため、細胞は自らの細胞を分裂させてコピーを作ります。
癌はそのコピーのエラーが生じたときに発生します。
歳をとれば、エラーが出やすくなります。
そして無尽蔵に間違ったコピーをし続けるわけです。
まがいなりにもコピーだから生体が悪いものだと認識しにくい。発見が遅れる。

それにしても13歳のウサギさんはすごいですね。
私も経験したことありません。きっと愛情をかけて育てられたのでしょうね。
これからも愛情たっぷりかけて動物を飼ってあげてください。


Re: 厳しい現実・・・。

はじめまして。
5歳の女の子プレーリードッグがいます。
今、先生が見られた扁平上皮癌と同じ症状で苦しんでます><
顎の骨が蝕まれて腫瘍の中にモヤモヤとカルシウムが溶け込んでカチカチの腫瘍になってます。
先生の見られたプレちゃんは一年前のことですが
その後はどうなられましたか?
やはり再発されたんでしょうか?
今、通っている病院では再発は確定なので ますます寿命を縮める結果となるので手術は不可といわれています。(顎の骨ごと顔半分取る手術をしなければ根治できないからと・・)
なんとか助けてもらいたい気持ちでいっぱいです。毎日ほっぺを気にする姿に涙が出ます。

Re: 厳しい現実・・・。

まぐまぐ様

いくつもの扁平上皮癌を診療していますが、
外科的摘出を行っても再発します。
しかし、大きくなると物が食べれなくなるので、
再発を覚悟で少しでも食べられるようにと切除します。

再発するから手術しない、根治できないからしない、
というだけでは片づけられない疾患ですので、
主治医の先生とご納得できるまでよく話し合ってください。


Re: 厳しい現実・・・。

ご返信ありがとうございます。
私は兵庫県在住なのですが田向先生のブログに出会って
勇気をいただきました。
今週3件目の病院にお伺いする予定にしています。
硬質化が著しく 元気いっぱいなだけにかわいそうで仕方がないです。この子も精一杯がんばって一生懸命食事してますし、最後まであきらめず元気になる日を目指そうと思います。

田向健一

動物病院の院長をやっています。
ペットの病気のことならたいていのことはこなしています。
カメやウサギからピットブルまで、外科も内科、眼科も歯科も行います。
動物、植物を含め、命あるものが大好きです。