重い想い

カルテ
03 /30 2012
先日、福島の避難区域から引っ越しをした方が、
犬を連れてがやってきました。

震災直後は、仮設住宅に犬を連れていくと、
なかなか受け入れてもらえず、
車の中で、犬とともに寝泊りを繰り返したと
言っていました。

そのワンちゃん、実は、耳に大きな腫瘍を持っていて、
いつもジクジク出血するので、
それだけでも、どうにかならないものかとの相談でした。
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しかし、このワンちゃんというのも、
大きな問題があって、16歳という高齢で、歳によるものか、
後ろ足にうまく力が入らない感じで見るからに弱っていました。


もちろん、腫瘍は腫瘍で取ってあげたいのはやまやまですが、
それ以前に、手術に耐えられるかが壁になりました。
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さらに、耳(耳介)を残してほしいというお話でした。
(こちらとしては、耳を切断したほうが、手術時間も短く済むし、皮膚の整形も簡単なのですが)
(飼い主様は、犬の余命はいくばくもないのは理解しているので、
腫瘍の根治的手術ではなく、せめて耳は残してあげて、ジクジクとした状態の改善をお願いされました)

さすがに、こんな八方塞がりな状態で、
かなり悩みましたが、
頑張れば、なんとかなるかも知れないという
根拠に乏しい私の妄想?と飼い主さんの強い強い想いを受けて、
長時間にわたる説明とご理解のもと、執刀することになりました。

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なんとか、耳介を残すことができ、うまく皮膚を縫合することができました。

3週間後、ジクジク感もなく、本人も快適になったようで、
元気になりましたと来院してくれました。
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正直、かなり、追い詰められましたが、
それも、すべては、飼い主さんの強い思いが後押ししてくれたのだと思います…。




ジェネラリストとスペシャリスト

カルテ
03 /24 2012
動物病院の開業医はジェネラリスト(何でもやる)ですが
(多分にもれず、私もジェネラリストです)、
その反対にスペシャリストと呼ばれる人もいます。

いわゆる専門医です。
ある一部の分野のみを毎日毎日診療しているため、
仕事の精度が私たち開業医とはくらべものになりません。

私も自分の知識や技術で歯が立たないときには、
そういった専門医先生の助けを借りて、
診療にあたります。

むしろ、こうしたスペシャリストといかに
スムーズに連携を取って治療にあたるほうが、より、
客観性のある有効な治療を行える可能性が高まります。

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わずか500グラムのチンチラの心臓の検査。
力を借していただいているのは、犬猫の心臓の専門医先生ですが、
心臓の構造は、哺乳類であれば、大きく違うことはあまりないため、
犬猫の知識を基本として、チンチラの心臓の評価を行ってもらい、
私のチンチラの知識と合算して、いまだ未報告の疾患の治療にあたります。

こういったマイナーな作業も私にとっては面白く、
この仕事を続けていく大きなモチベーションとなっています。

そんな気持ちを忘れず、前を向いて進んでいきたいものです。





超獣!

動物
03 /17 2012
あるとき、とある生き物が捕獲されました。

見た目は、イタチのようだけど、
3回りほど大きい。
牙が鋭くて噛まれたら、
手のひらを貫通するほどの力。
捉えようがなく、うまく捕まえることが困難。
水陸両用。

そして、賢く利口。


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手を見るととても小さな爪。(コレ、最大のヒント)
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そう、コツメカワウソ(小爪カワウソ)。


この動物、
見た目によらず、飼い主以外には超凶暴…。
なぜか腎結石がよくできます。

これホントです。

インスリンリン♪

カルテ
03 /09 2012
このブログも長くやってきているので、
だんだんとネタが無くなり、マニアックにならざるを得ません…(苦笑)。

ということで、インスリン。

インスリンと聞いて、糖尿病!と思った方はちょっとスルドイ。


インスリンは、膵臓にあるベータ細胞という細胞から
放出されるホルモンの一種。
インスリンが出ると、細胞が血液中の糖を取り込み、
結果、血糖値を下げます。

しかし、インスリンが出なくなったり、
うまく作用しなくなってしまうと、
インスリンの作用が期待できないため、
どんどん血糖値が上がってまいます。
これが「糖尿病」と呼ばれる状態です。

そんな時は、外部から人工的にインスリンを入れて、
血糖値を下げなくてはいけません。
それが、このインスリン注射。相手は犬ですが、ヒト用。
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で、この逆の病気もあります。
それは、インスリノーマと言ったり、膵島細胞腫と呼ばれる病気です。
インスリンを出す細胞が腫瘍化し、
インスリンが余分に出るようになり、低血糖を引き起こします。

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金属棒で示す丸いポチは、膵臓の腫瘍、インスリノーマ。
こんなに小さいですが、インスリンをバンバン出す悪者です。
こんな時は、この悪者を摘出します。すると、インスリンが少なくなり、
血糖値が上がります。


病気の部位は膵臓で同じですが、
「高血糖の糖尿病」、「低血糖のインスリノーマ」。

今日は、1日にこの病気をそれぞれ診て、
血糖値を上げたいんだか、下げたいんだか、
なかなか、ちょうどいいところにいかないなぁ~つくづくと思ったのでした。




田向健一

動物病院の院長をやっています。
ペットの病気のことならたいていのことはこなしています。
カメやウサギからピットブルまで、外科も内科、眼科も歯科も行います。
動物、植物を含め、命あるものが大好きです。